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現在でも同学部の硬直したカリキュラム内容は余り変わっていないらしい。その後、大学院では別の大学に移ったが、ここでも旧態依然たる状況がまかり通っていた。
いささか個人的な話が長くなって恐縮だが、学部時代に私が大学で正規に勉強したくてかなわなかった科目、すなわち公共選択論や公共経済学、政策科学、政策決定理論、公共哲学、社会学、組織論、社会システム論などがすべて最近の政策系学部には設置されている。学生は居ながらにして最先端の、しかも学際的で多様な講義に接することができる。加えて、都市政策や環境政策、福祉政策、国際紛争など、私たちが直面する重要な政策課題に関わる科目も設置されている。私は大学時代の「使えない語学」の後遺症で、今でも外国語では苦労している。パソコンにいたっては昨年から始めたばかりで、マニュアルを手にして悪戦苦闘の毎日である。これらすべてを大学が面倒みてくれる。最初に「学生が羨ましい」というたのは、そうした意味においてである。
繰り返しになるが、1970年代に埼玉大学大学院と筑波大学大学院にほぼ同時に政策科学研究科が設置されたが、両者はともに主に社会人の再教育、とくに公務員の国内留学を主な目的としていた。それから10数年をへて、今度は学部レベルで政策系学部の設立ラッシュが起きている。政策系学部は、それ以前の「国際」「コミュニケーション」「情報」「人間科学」などの名を冠した新学部と同列に並べて論じられることが多い。たしかに、政策系学部も含んだ新しいネーミングの学部がここ数年急速に増えている背景には、既に第1章や第2章で指摘されているように、大学審議会の答申「平成5年度以降の高等教育の計画的整備について」(1991年5月17日)の影響が決定的であった。この答申で、大学短期大学の新増設が原則抑制され、文学部や法律・経済学部などの既設学部の新設は難しくなった。逆に同答申で、例外的事項として、「学術研究の進展や地域社会の発展等の観点から極めて必要性の高いものは認める」とされたところから、学部の新設や短期大学の4年制大学への改組がこうした学際的な学部に集中することになったわけである。
しかし。「国際」「コミュニケーション」「人間科学」「情報」などの学部が、学部の性格がとらえどころがないだけでなく、しばしば内容が伴わない「看板倒れ」に終わることが多かったのに対し、政策系学部は短期間のうちに社会的評価を獲得し、その影響は同一大学内の既設学部のカリキュラム改革を引き起こすところまで及んでいる。もちろん、政策系学部が同じ新傾向学部中でも圧倒的な注目度を集めているのには、フロントランナーであったSFC(慶応義塾大学湘南藤沢キャンパス)の成功が大きかった。また後述するように、慶應に次いで中央、立命館、関西学院などの有力私大、さらに県立大学などが

 

 

 

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